彼女と別れた

祖母にもらったテレビはB-CASカードが抜かれていて、地上波が映らなかった。もう一緒にテレビを見る人もいないので、まあいいかと思う。

収納付きベッドの引き出しの中にポカンと穴が空いていて、赤ん坊くらいなら入れそうだった。

セミダブルのベッドは一人には広すぎることにも、一人暮らしを始めるときに二つずつ買った食器もいらなくなったことにも気づいた。

友達の結婚式でもらった引き出物カタログには特にほしいものがなかったので、彼女の好きな梅干しを注文したけれど、それも半分以上余っている。

彼女があらゆる食べ物にかけていたお酢もまだまだ残っていて、すっぱいものが苦手な自分にはどうやって使い切ればいいのかわからない。

風呂場にあった洗顔フォームをときどき自分も使っていた。さっき新しい別なものを買ってきた。

歯ブラシを捨てようと思ったが、また帰ってくるかも、と的外れで薄っぺらい期待に手を止められた。

 

彼女と別れた。

なんとなく向こうの心が離れていっているのはわかった。

たぶん、前ほど自分のことを好きじゃないことも知っていた。

安心しきっていた部分もある。

自分は鬱から徐々に抜け出して、調子がよくなってきた。

でも鬱のときと変わらず、自分は彼女に甘えていた。

「鬱だから」という理由だけで優しくしてくれるし、どんな愚痴も聞いてくれたから、絶対に嫌われることはないだろう、と甘えきっていた。

デートは近場で済ましたし、毎回同じように映画を見に行って、夜は家に帰ってご飯を食べて寝る。

こんなことを繰り返した。

 

いつからか平日はだんだんと彼女が家に来なくなり、思えば最近は土日でも約束することが減っていた。

それでも自分は楽しかった。

良い距離感になったと思っていた。

 

でも彼女は違った。

どこかですれ違っていたし、自分は多分そのすれ違いがどこにあるのか知っていた。

わかっていたけど何もしなかった、ほんとうに何もしなかった。

 

少し前に女友達と飲んでいるときに「彼氏に不満がある」という話を聞いた。

彼氏がずっと家でしか遊んでくれない、旅行もあまり行ってない、だから最近つまらない。

要約してしまうとそういう話で、とても簡単で、取るに足らないように見えてしまうけれど、いまなら自分はこれがとても大きな事で、二人にとってはターニングポイントなのだとわかる。

結局その彼氏は彼女の不満をしっかりと受け止め、見事な形で名誉を挽回したらしい。

それを聞いた時、自分もそうかもしれない、と思っていたが、結局自分は彼女の甘いところにつけこんで、ただ、だらっと付き合いを続けた。

 

これは罰だと思う。

自分はいままで失恋とか、惚れた腫れたを少なからず甘く見ていた。

自分はこういうことでは泣かないな、とか、どっちかが好きじゃなくなったなら、別れて良くない?とかそういう風に割り切れると思っていた。

 

心から、「あたしゃバカだね」と思う。

 

こじんまりとして良い雰囲気のカフェが近所にできたから行ってみようと思った。

母からペアの蕎麦猪口をもらったので、年末そばでも食べようと思っていた。

そうめんが残っているから、今度日曜のお昼にでもにゅうめんにして梅干しをのっけて食べようと思っていた。

クリスマスプレゼントにはんてんを買いに行こうと思っていた。

今日、銭湯に行こうと思っていた。

なにをしようにも、すべて「いっしょに」という枕詞が付く。

 

こんなことをブログに書いたところで何にもならないのはわかっているけれど、どうしても書きたくなった。

自分に酔っているように見えるに決まってる。

自分もそう思うし、他人のこういうブログや文章や曲や映画を見て、そう思っていた。

でも当の本人は、ほんとうは酔っているわけじゃなくてどうしようもないだけだ。

 

大江千里の「格好悪いふられ方」という曲が「モテキ」で流れているシーン、自分はものすごく笑った。

大笑いしたし、何度も見た。

曲も好きだった。

でも共感はしなかった。

だって結局こいつ結婚してんじゃん、モテてんじゃんって思った。

でもいまはまったく笑えない。

女の愛の確かめ方と男の愛の注ぎ方はいつでも卑劣

先日、伊東にある友人の別荘を訪れた。

別荘というと、豪邸、あるいは今期のテラスハウスのようなおしゃれな建物というイメージがあったが、ここはそのどちらにも当てはまらない。

小高い山の上にある単なる一軒家で、どちらかといえばボロい。

いまはだいぶ友人によって整備されたが、2年前に初めて行ったときには玄関まで草木が生い茂っていて、「藤岡弘、探検隊」のように長く伸び放題の枝や草をかき分けながらやっとの思いで家の中に入らねばならないほど、とにかく別荘というもののイメージからはかけ離れたものだった。

だから、自分は非常に気に入った。

 

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さくらももこが、死んだ。

さくらももこが、死んだ。

有名人が死んで、こんなに悲しかったのは児玉清以来だった。

 

さくらももこの作品をすごく読んでいた、というわけでもない。

本業?の漫画よりもエッセイの方を読んでいる。

いまSNSで話題になっているコジコジなる作品も、実は全然読んでなくて、よくわからない。

でも、こんなにも胸が締め付けられているのはどうしてなんだろう。

 

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鬱った。2

初めて精神科医を見た。生で。

初老の男性だった。

単発で色黒だが、目の下はクマに覆われていて、頬もすこしこけている。

よっぽど精神病患者らしかった。

  

診察は簡単なものだった。

「休めるなら休んで。薬を出すから飲んでみてください」

予想通りといえば予想通り。

 

とにかくそれから自分は正式に鬱になった。

 

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鬱った

昨年の末から体の調子が悪いと思っていたら、心の調子が悪かった。

肩こりがひどく、右目が痙攣した。

「こはいかに」と思い色々調べたらどうやら心の方に原因があるのではないかとのことをグーグル先生が教えてくれた。

 

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