鬱った。2
初めて精神科医を見た。生で。
初老の男性だった。
単発で色黒だが、目の下はクマに覆われていて、頬もすこしこけている。
よっぽど精神病患者らしかった。
診察は簡単なものだった。
「休めるなら休んで。薬を出すから飲んでみてください」
予想通りといえば予想通り。
とにかくそれから自分は正式に鬱になった。
鬱について調べてから自覚している症状としては6つあった。
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食べ物の味が感じない
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食欲がない
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異常なほど眠い
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どもる(前から?)
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相手の言葉は聞き取れるが理解ができない。
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文章が書けない。
思うように話せないとかは良い。
これにはムラがあって、友達と会っているときにはそこまで出なかった。
一番辛かったのはやはり文章が書けなくなったことだった。
書きたい。と思っても書けなかった。
あと眠くなるというのも意外と辛い。
気づいたらデスクで眠っていることが多くなった。
落ちてるに近かったと思う。
仕事で一番辛かったのは、議論や相手とのコミュニケーションができなくなったこと。
やろうと思っていたことをすぐに忘れてしまうか、どうしたらいいかわからない。
それがごく簡単なことでも。
薬を飲みながらなんとか会社には通勤した。
そこから年末休みを挟み、だいぶ心が軽くなった。
年末は良い。
テレビもバカなことばかりやってくれるし、だらだら過ごしても誰にも何も言われない。
仕事始めはかなり調子が良かった。
非常に良かった。
新しい年になり、昨年の最後などどうでもいい、心機一転だ!と決意を新たにした。
いや、なかったことにした。
そこから数日は確かにそのままの調子だった。
文章もなんとか書けていた。
周りに鬱だと悟られないよう、飲み会にも積極的に参加し、会社のフットサルにも欠かさず行った。
二月から先はほとんど覚えていない。
平日の一日一日が長かった。
かといって土日や祝日が楽しみというわけでもない。
休日は空白みたいだった。
もちろん友人と遊びに行ったこともあった。
フットサルも続けていた。
逆に一人でいるときは何をしていたか覚えていなかった。
土日は単に仕事がないだけだった。
文章を読んでもよくわからず、文章を書いても続かず、性欲は失せ、そしてとにかく、とにかく、眠かった。
六月、暑かった。
ついに話が通じなくなった。
言いたいことはあるのに、口に出せなかった。
本当にごく簡単な作業がとても難しくなった。
どれくらい簡単かというと……それを説明するのはいまの自分でも難しい。
とにかく普通の人だったら誰でもできることができなくなった。
異変に気づいた上司が社長と話す場を設けてくれて、会社に入って初めて1週間も休むことになった。
続く